労働者健康福祉機構

  独立行政法人労働者健康福祉機構富山労災病院

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vol.1 医療情報
vol.2 脊椎圧迫骨折
vol.3 痔核・脱肛
vol.4 膵臓癌
vol.5 胃癌
vol.6 頚椎の手術

膵臓癌(すいぞうがん)の最前線

 わが国における膵臓癌(すいぞうがん)の発生頻度は人口10万人あたり14.8人(男性)、11.5人(女性)で、癌(がん)全体の3.8パーセントを占めています。しかし悪性度が高いことから発生頻度のわりに死亡者数が多く、現在年間死亡者数約2万人と1960年代の約3倍に達し、癌(がん)死の第5位(男性)、第6位(女性)となっています。
 ここでは一般的な膵臓癌(すいぞうがん)のはなしから当院における治療の解説をおこないます。

膵臓(すいぞう)について
膵臓癌(すいぞうがん)の症状
膵臓癌(すいぞうがん)の診断
膵臓癌(すいぞうがん)の治療
膵臓癌(すいぞうがん)の予後
膵臓癌(すいぞうがん)の治療成績向上のために
   〜膵頭一括切除・血管移植術〜


膵臓(すいぞう)について

 膵臓(すいぞう)はちょうど胃(い)の後ろに横たわる長さ約15センチの臓器(ぞうき)で、頭部・体部・尾部の3つに分けられます。頭部は十二指腸(じゅうにしちょう)と、尾部は脾臓(ひぞう)と接しています。
 膵臓(すいぞう)の中には膵管(すいかん)が通っており、膵臓(すいぞう)の細胞(さいぼう)で作られた消化液(膵液(すいえき))が尾部から頭部にむけて流れています。頭部において膵管(すいかん)は、肝臓(かんぞう)で作られた消化液(胆汁(たんじゅう))が流れている胆管(たんかん)と合流し、十二指腸(じゅうにしちょう)に開口しています。
 頭部には、上腸間(じょうちょうかん)膜(まく)動脈(どうみゃく)・上腸間(じょうちょうかん)膜(まく)静脈(じょうみゃく)という太い血管(けっかん)が貫通しています。上腸間(じょうちょうかん)膜(まく)動脈(どうみゃく)は大動脈(だいどうみゃく)から出て腸(ちょう)にいたる血管(けっかん)です。上腸間(じょうちょうかん)膜(まく)静脈(じょうみゃく)は腸(ちょう)で吸収された栄養を肝臓(かんぞう)に運ぶ血管で、肝臓(かんぞう)に入る直前で膵臓(すいぞう)の裏を走る脾(ひ)静脈(じょうみゃく)と合流し門脈(もんみゃく)を形成します。
 また、膵臓(すいぞう)には膵液(すいえき)を作る細胞以外にホルモンを作る細胞(さいぼう)があります。産生されたホルモンは脾(ひ)静脈(じょうみゃく)などを介して門脈(もんみゃく)へはいり、肝臓(かんぞう)へいたります。


膵臓癌(すいぞうがん)の症状

 膵臓(すいぞう)のなかでも癌(がん)ができやすいのは頭部です。頭部には胆管(たんかん)(肝臓(かんぞう)で作られた胆汁(たんじゅう)を十二(じゅうに)指腸(しちょう)へ送り出す管)が通っていますが、癌(がん)が浸潤(しんじゅん)することで胆汁(たんじゅう)が流れなくなり黄疸(おうだん)が出ます。これが膵(すい)頭部癌(とうぶがん)の一般的な初発症状です。
 一方、体部・尾部にできる癌(がん)では黄疸(おうだん)よりも背部痛が初発症状となります。この症状は膵臓(すいぞう)周囲の神経(しんけい)叢(そう)への浸潤(しんじゅん)によるものが多く、すでに高度に進行している可能性を意味しています。
 また膵臓(すいぞう)にはホルモンを作る細胞(さいぼう)がありますが、癌(がん)により障害をうけることがあります。ホルモンの中でも血糖(けっとう)を下げる作用のあるインスリンが不足すれば糖尿病(とうにょうびょう)が出現します。
 その他の初発症状としては、食欲不振、下痢、体重減少などがあります。


膵臓癌(すいぞうがん)の診断

 膵臓癌(すいぞうがん)を疑った場合、一般的には超音波(ちょうおんぱ)検査やCT検査が行われます。さらにMRIといった特殊な検査や血管(けっかん)造影(ぞうえい)・ERCP(内視鏡(ないしきょう)による胆管(たんかん)・膵管(すいかん)造影(ぞうえい))といった侵襲的な検査が必要となります。
 血液検査ではCA19-9という腫瘍(しゅよう)マーカーが特徴的ですが、早期の段階で異常が出ることは少なく、早期発見にはやはり画像診断が重要になってきます。
 最近ではPETを使用した診断方法が注目をあびており、当院でも導入・実施されております。


膵臓癌(すいぞうがん)の治療

 膵臓癌(すいぞうがん)に対しては、現在のところ切除術以外に有効な治療法は確立されていません。膵(すい)頭部癌(とうぶがん)では膵(すい)頭部(とうぶ)を胃(い)下部〜十二指腸(じゅうにしちょう)〜空腸(くうちょう)上部や胆管(たんかん)とともに切除する膵頭(すいとう)十二(じゅうに)指腸(しちょう)切除術(せつじょじゅつ)が、膵体(すいたい)尾部癌(びぶがん)では膵体(すいたい)尾部(びぶ)を脾臓(ひぞう)とともに切除する膵体(すいたい)尾部(びぶ)切除術(せつじょじゅつ)が標準術式となります。しかし全症例のうち切除可能となるのは40パーセント以下であり、バイパス術など非切除術が選択されることがあります。
 手術以外に化学(かがく)療法(りょうほう)や放射線(ほうしゃせん)療法(りょうほう)がありますが、効果はあまり期待できません。


膵臓癌(すいぞうがん)の予後

 膵臓癌(すいぞうがん)と診断された場合の切除率は40パーセント以下と低く、切除後の5年生存率(5年後に生存している割合)も10パーセント前後です。
  もう少し詳しく説明しましょう。膵臓癌(すいぞうがん)の進行度はT期〜W期の4段階に分類されます。T期の切除術後の5年生存率は50〜60パーセント程度ですが、T期で診断されるのは全体の2〜3パーセントにすぎません。逆に70〜80パーセントを占めるW期の場合、たとえ切除できても5年生存率は10パーセント以下です。
  非切除の場合には化学(かがく)療法(りょうほう)や放射線(ほうしゃせん)療法(りょうほう)が選択されますが、2年生存すら期待できないのが現状です。


膵臓癌(すいぞうがん)の治療成績向上のために
〜膵頭一括切除・血管移植術〜

 膵臓癌(すいぞうがん)の治療における問題点は早期発見の困難さだけでなく、T期ですら根治術後に高い確率で再発してくることです。再発部位は局所(膵臓(すいぞう)周辺)がもっとも多く、その一因が膵臓癌(すいぞうがん)のリンパ系・神経(しんけい)系への浸潤(しんじゅん)であることがわかってきました。特に膵(すい)頭部(とうぶ)を貫通している上腸間(じょうちょうかん)膜(まく)動脈(どうみゃく)・上腸間(じょうちょうかん)膜(まく)静脈(じょうみゃく)のまわりにはリンパ系・神経(しんけい)系が豊富で、膵臓癌(すいぞうがん)の浸潤(しんじゅん)もまれではありません。これまでの標準術式である膵頭(すいとう)十二(じゅうに)指腸(しちょう)切除術(せつじょじゅつ)では技術的にこの血管(けっかん)を合併切除することが困難でしたが、我々はふとももの血管(けっかん)を移植(いしょく)することで上腸間(じょうちょうかん)膜(まく)動脈(どうみゃく)・上腸間(じょうちょうかん)膜(まく)静脈(じょうみゃく)を合併切除する膵頭(すいとう)一括(いっかつ)切除(せつじょ)術(じゅつ)を確立しました。


<実際の手術画像>